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愛は、流れる

こんにちは。打ち合わせ貧乏、駒鳥です。

久し振りの、お知らせ以外のブログ更新。相変わらずの筆無精っぷりですが、今日は珍しく書きたい気分にさせる映画を観たので、その極私的感想なんかを。

先日、大阪・十三の第七藝術劇場さんに行ってきました。店をしてると中々映画を観に行く時間が取れないのですが、どうしてもこれは観ておきたい!と、何とか時間をヤリクリし、しなければいけない事も放り出し、無理矢理潜り込んだ次第。

その映画は「ラヴ・ストリームス」。ジョン・カサヴェテスの、愛の映画。


多くを語らず、詳細に語り尽くす。一見矛盾しているようにみえるが、それが成立しているのがこの映画。主人公のロバートとサラ。この二人は多分、兄弟。というのも特に二人が「兄弟」であるという描写はストーリー上には殆どない。回想シーンがあるわけでもなく、兄弟らしい振る舞いがあるわけでもなく、よくある兄弟の想い出エピソード的な物も殆ど無く、あるのは物語も終盤に差し迫った頃に出てくる、ロバートが義兄に「もう姉には構うな!」と怒鳴り散らす台詞ぐらい。にも拘わらず、二人にしかわからない、奇妙な兄弟愛が、そして二人の人生が、映画の全編を通して、そこには、あるのです。

では、その愛はどこからきたのか。正直、シナリオライティング的には失敗作。不明瞭、説明不足、起承転結や序破急など、およそ備えておくべきシナリオ作法は、見事に欠落。この作品に置いては、ストーリーテリングについて述べることは不毛。さらばシナリオ作法。

では、何が映画の冒頭から二人を兄弟たらしめたのか。それは単純。観ているものが勝手にそう思い込んでいる。ただ、それだけ。

しかし、ストーリー以外で、ただ思い込ませるというのは、実は極々至難の技。それを可能にしているのが「役者の演技」そのものだ。

カサヴェテス作品は「役者の映画」だと思う。それは処女作「アメリカの影」が、役者同士のワークショップから産まれた、純粋な即興映画だったという事からもわかる通り、銀幕の大スターが登場して云々の話では勿論ない。役者を役者足らしめる「演技」そのもの、それをカメラを使って発酵させ、編集と言う名の蒸留をし、最終的に映画という、ちょっと癖のある樽に詰められた、まるで美味いウイスキーのような映画、それがカサヴェテス作品であると言えるのではないだろうか。ここまでくれば、後は観客はただ、その美味い酒に酔いしればいい。

ここで、カサヴェテスの言葉を引用してみる。ロバートが義兄に「もう姉には構うな!」と怒鳴り散らすシーンについてだ。

映画が進むにつれ、どうやって弟と姉であるか学んだよ。苦痛に満ちた過程だった。なぜとか、どうやってという問いに対して何の答えも持っていなかった。ジーナはぼくに言った。「ねえ、こういうのはどうかしら……その電話を盗み聞きするっていうのは。ただ静かに身を引かない方がいいわ。その男は私を傷つけているんだから、勝手に死んじまえって言う方がいいわよ。そうしないと、観客に永遠に嫌われ続けるわよ。観客はもう戻って来ないわ。そうしないなら、あなたはただの臆病者よ」。これは本当に個人的な話だ。つまり、映画をよりよくするという話じゃない。実際にあったことなんだ。つまり「賛成してよ!」って言われたわけだ。いいとも。そこでぼくは「わかった、わかった。それはいい考えだ。賛成しよう。いいね?」(笑)。自分の演じる登場人物を通して、頼りにしている様々な人々を通して、作業を進めながら、こうしたことを発見する……。ということはつまり、自分がもと巻き込まれなきゃならない。
 ー「カサヴェテスは語る」



そう、彼にとって演技とは、何かを感じた振りをするのではなく、実際にそれを感じる事なのだ。そこにカサヴェテスの作品の、美味さの秘密が隠されているのである。

ジーナ・ローランズとジョン・カサヴェテス。二人が感じた「演技」はどんな場面のどんなシーンでも、ロバートとサラという兄弟であり、観ている側は終盤近くの弟の「もう姉には構うな!」という台詞は、観客が何となく感じ取っていたその感情に、やっぱりそうかという安堵感と、それ故の、それまでの二人の行動の説得力という翼を与えてくれる。その時、命の水の味を知った我々は、映画をあらゆるものから真に解放するのだ……。

なんて、調子に乗ってわかった風なことを言ってますが、ようするに、凄かったんですよ、ホントに。笑えないし、泣けない。怖くもないし、ましてやハラハラドキドキするわけでもない。およそ普通映画に求められるものは何もなく、そこには笑えるし、泣けるし、とてつもなく怖くて、ハラハラドキドキするものが、ある。これは映画やない、映画や。そんなこんなで「ラブ・ストリームス」、観て二日経った今でも、否、今後の人生ずっと引きずるでろう、もの凄い映画でした。

※因に現在「ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ」絶賛公開中です。一部はフィルム上映も有り。この機会のがしたら、ホンマ、損しまっせ。

ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ
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2012-07-26 : お知らせ : コメント : 0 : トラックバック : 0
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天満橋の片隅で、駒鳥文庫という映画関連専門の古書店を営んでおります。ちなみにネコを飼っているのですが、名前は『店長』といいます。読みはそのまま『てんちょう』です。なので店主は平社員なのです。古本と、映画と、たまに猫。とりあえずそんな感じで日々を綴っていますのでよろしくお願いします。

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